胃経の経穴、巨髎(顔面神経麻痺、三叉神経痛、目の腫れ、鼻疾患のツボ)

胃経の経穴、巨髎(顔面神経麻痺、三叉神経痛、目の腫れ、鼻疾患のツボ)

こんにちは。町田玉川学園鍼灸院 丹天堂の鍼灸師、丹天です。

東洋医学において、「経穴(けいけつ)」、いわゆる「ツボ」は、心身の深い部分に働きかけるための大切な入口だと考えられています。数多くある経穴の中から、今回は特に顔面部の不調やお悩みに深く関わる「巨髎(こりょう)」について、皆様と一緒に知識を深めていきたいと思います。

この巨髎は、足の陽明胃経(いけい)という、消化吸収を司る「胃」の働きと密接に関わる経絡上にあります。お顔の不調と言うと、皮膚科や整形外科をイメージされるかもしれませんが、私たち東洋医学を志す者にとって、顔の不調もまた、全身の巡りやバランスの乱れから現れるサインなのです。

 

巨髎(こりょう)とは?その名称に込められた意味

 

巨髎は、私たちのお顔の頬骨の下側、鼻の横に位置する経穴です。指で触れると、少し窪みを感じられる場所かと思います。

まず、その名前の持つ意味合いから見ていきましょう。

  • 「巨(きょ)」:大きい、巨大な、という意味があります。

  • 「髎(りょう)」:骨の窪み、または穴(開口部)を意味します。

つまり、巨髎とは、**「頬骨にある大きな窪み」**を指し示していると解釈できます。

しかし、東洋医学的な知識をもってこの名前を深く見ると、もう一つの意味合いが浮かび上がってきます。それは、「巨」が示す「広範囲」や「多大な働きかけ」です。この経穴は、単に場所を示すだけでなく、その働きが顔面神経麻痺、三叉神経痛、目の腫れ、そして鼻疾患といった顔面部の多岐にわたるお悩みに作用することを示唆しているのです。

この巨髎が古来より大切にされてきたのは、これらの不調やお悩みに直接働きかけるだけでなく、顔面部の重要な血管や神経が走行する場所にあるためです。現代的な視点で見ても、非常に重要なポイントだと言えますね。

 

鍼灸院丹天堂の哲学:なぜ経穴を重要視するのか

 

私ども鍼灸院丹天堂では、経穴そのものを非常に重要視しています。それは、経穴が、単なる皮膚上のポイントではなく、経絡という全身を巡るエネルギーラインの「交通の要所」だと捉えているからです。

クライアント様が抱える「不調」は、例えるなら、水の流れが滞った川の表れです。巨髎という経穴に現れる、顔面神経麻痺のようなお悩みや、目の腫れ、鼻の不調といったサインは、胃経という川の流れがどこかで滞っていることを知らせる「警告灯」のようなものなのです。

現代の多くはその警告灯が点いている場所、つまり「不調が出ている局所」にのみアプローチする、その場しのぎのケア(対症療法)に終始しがちです。しかし、鍼灸院丹天堂の哲学は、警告灯を一時的に消すことではなく、川の流れ全体を整えることにあります。

経穴は、全身のバランスや気の流れを映し出す鏡であり、また、そのバランスを外から働きかけて整えるための窓口でもあります。だからこそ、一つの経穴を深く理解し、その経穴が属する経絡全体の状態を把握することが、クライアント様をより健やかな状態へとお手伝いする上で不可欠だと考えています。

 

鍼灸院丹天堂が経穴の不調を整えるために「脈診流経絡鍼灸」を選んだわけ

 

では、巨髎をめぐる顔面や鼻のお悩みを**「整える」**ために、私ども鍼灸院丹天堂が採用している「脈診流経絡鍼灸」が、なぜ有用性があるのでしょうか。

脈診流経絡鍼灸の最大の特長は、不調のある局所ではなく、全身の「気の偏り」を整えることにあります。

 

1. 「見立て」の根拠となる脈診

 

私たちの施術は、まず手首の動脈に軽く触れる「脈診(みゃくしん)」から始まります。東洋医学の知識を用いて、この脈を通じて、全身を巡る十二本の経絡のどこに気の過不足(バランスの乱れ)があるのかを「見立て」るのです。

巨髎は胃経に属しますが、もし脈診の結果、胃経だけでなく、他の経絡、例えば肝経や脾経にも大きな乱れが見られた場合、巨髎に現れているお悩みは、胃だけの問題ではないと判断します。顔面部の不調の原因が、実は消化器系の過労や精神的なお悩みから来ているという見立てができるわけです。

 

2. 全身の「整える力」に働きかける

 

脈診流経絡鍼灸では、巨髎のような顔面部の経穴に対して、直接強い刺激を与えることはほとんどありません。代わりに、手足の末端にある特定の経穴に、非常に細くやさしい鍼でわずかに働きかけます。

これは、顔の不調を「顔だけで治そう」とするのではなく、手足の経穴を通じて、経絡全体、ひいては心身全体に作用することを目的としているからです。

例えるなら、巨髎という経穴が属する胃経の川全体の上流や下流にある「水門(ゲート)」を調整することで、川の流れそのものをスムーズにするイメージです。胃経全体の気の流れが本来の状態へと整うことで、結果として巨髎の周辺に滞っていた不調が解消されていきます。

このアプローチこそが、その場しのぎのケアではなく、クライアント様がもともと備わっている力、すなわち自ら整える力を最大限に引き出し、健やかな状態を長く維持するお手伝いができる理由なのです。

 

巨髎が心身の健康にどのように関わるのでしょうか?

 

巨髎の不調と言うと、顔面や鼻の物理的な問題に目が行きがちですが、東洋医学では、胃経の乱れは心(精神)の状態にも深く影響すると考えます。

 

身体的な関わり:栄養と循環の要になります。

 

胃経は、飲食物からエネルギーを取り込み、全身に分配する「消化吸収」の要です。巨髎というポイントが健康な状態にあるということは、胃経全体がスムーズに機能していることを意味します。

  • 顔面神経麻痺・三叉神経痛:胃経の乱れから顔面部の「気」や「血」の巡りが悪くなると、神経への栄養や保護が十分に行き届かなくなり、しびれや痛みといった不調となって現れることがあります。巨髎を整えることで、顔面部の巡りを良くし、これらの不調にアプローチします。

  • 目の腫れ・鼻疾患:胃経は目の下から始まり、顔面の重要な領域を走行します。経絡の熱や湿気が顔面に滞ると、目の腫れや鼻炎、鼻詰まりといった不調を引き起こします。巨髎の施術は、顔面の余分な熱や水分の流れを促し、本来の状態へ整える働きかけをします。

 

精神的な関わり:思考と安定

 

東洋医学の知識では、胃や脾といった消化器系は、「思(し)」、つまり「考えること」「思い悩むこと」と深く関係しています。

胃経が乱れると、考えすぎてしまう、くよくよと思い悩んでしまうといった精神的なお悩みにつながることがあります。顔面部の不調は、このような「考えすぎによる気の停滞」が、顔という目立つ部分に現れた結果とも解釈できるのです。

巨髎の施術を通じて胃経を整えることは、単に顔の不調をケアするだけでなく、思考の巡りを良くし、心を落ち着かせ、地に足の着いた安定した心身の状態へと導くお手伝いにもなるのです。

 

経穴を通して東洋医学、ご自分の健康に

 

今回、巨髎という一つの経穴に焦点を当てて解説させていただきましたが、経穴は全身に数百と存在し、それぞれが固有の名前と働きを持っています。

今後、すべての経穴について一つひとつ詳しく解説していきます。それぞれの経穴が持つ奥深い意味、それが現代の私たちが抱えるお悩みにどのように働きかけるのかを、皆様の健康にお役立てください。

 

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

 

町田玉川学園鍼灸院 丹天堂は、常にクライアント様お一人おひとりの心身の状態と向き合い、その声に耳を傾けることを大切にしています。

顔面の不調は、外見だけでなく、日々の生活の質(QOL)にも大きく関わります。もし、巨髎が関わる顔面神経麻痺、三叉神経痛、目の腫れ、鼻疾患といったお悩みを抱えていらっしゃいましたら、ぜひ一度、鍼灸院丹天堂へお越しください。

鍼灸師 丹天が、脈診流経絡鍼灸という全身を整えるアプローチで、クライアント様がもともと持っている自ら整える力を最大限に引き出し、より健やかな状態へと進むためのお手伝いをさせていただきます。

あなたの健康的な毎日を、心より応援しております。

◎経絡やツボの考え方について、さらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
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